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《さくらの大冒険 開発ストーリー vol.2》 (津村修二)

vol.2では構想からルールが完成するまでの過程を書きます。ゲームの核となる部分の話です。

【最初の構想は”さくらのマイホーム”】

前章の経緯から「さくらの続編、協力ゲーム」という大まかな方向性が決まりました。その後、私は既存の協力ゲームを遊びながら、その傾向と面白さのポイントを探っていきました。

年が明けた、2018年1月。さまざまな協力ゲームの研究を重ねる中、どうにも煮詰まってしまった私は気分転換に近くの銭湯へ行きました。と言うのも、頭の中が飽和状態になったら、一旦そのことについて考えないようにし、心身ともにリラックス状態にさせるとアイデアは不意に降りてくる、ということが多々あるからです。その実、散歩中に思いつく人も少なくないようです。私は経験上、銭湯でひらめくことが多かったので行きました。
その作戦は大当たり。お湯に浸かりながら、ぼーっと浴槽の格子状になった床と排水口を眺めていて、「あ!」とアイデアが思い付きました。その時、思い付いたのは盤面上にある一つのコマを全員でカードか何かでマスに沿って進めながら、どうすればゴールに辿り着けるかを目指すパズル的な協力ゲームでした。興奮状態で自宅へ戻り、忘れないようにラフスケッチをしました。

それで出来上がった最初の構想が「さくらのマイホーム」。森の中で迷ってしまったさくらを日が暮れてしまう前に全員で協力してお家に帰すゲームです。


「さくらのマイホーム」ラフスケッチ

【ロマン溢れる海洋冒険物がテーマに】

構想を練っていく段階で、好奇心旺盛なさくらのキャラクターがより活きる設定にしたい、子どもがワクワクするようなストーリーにしたい、複数のゴールをチェックポイントのように回っていくシステムにしたいという欲が出てきました。そこで、さくらが世界に散らばる宝を求め旅をする海洋冒険物にテーマ変更。船や金貨、宝箱、海賊、無人島、古地図などが登場する海洋冒険作品は、洋の東西を問わず、これまで数多の物語が紡がれていますが、それだけこの題材に人間の想像やロマンを掻き立てる普遍性があるのではないかと考えました。海洋冒険物にテーマ変更した大きな理由はそこにあります。
仮タイトルで「さくらの宝探し」と名付けた原案ルールを下記に紹介します。

【”さくらの宝探し”ルール紹介】

・クリア条件は規定ターン内に世界に散らばった7つの宝を協力して手に入れること。
・盤面は世界地図。縦6列×横6列。(全36マス)
・さくらのコマは日本(縦3列目-横3列目の場所)に置く。
・7つの宝の場所はダブルサイコロを振って出た目によって決める。宝は最初に6つの場所を決め、最後の1つは6つを集めた後、決める。(最後に出現するイメージ)
・数字カード「1」「2」「3」が各4枚あり、シャッフルしてプレイヤーに均等に配る。
・キャラクターカードが6枚あり、シャッフルして1枚ずつ配る。(何枚か余る)
・適当な方法で最初のプレイヤーを決めたら時計周りに手番を進める。
・手持ちカードはすべて表向きにして、全員の数字が見えた状態で始める。
・手番になったら、手持ちカードから1枚を裏返してその数だけさくらを進ませるか、さくらの向きを変えるか、裏返した1枚を表にするか、キャラクターカードを使う(1度だけ使用可)か、選択する。この時、何を選択するかは全員で相談ができる。
・さくらは前(さくらが向いている方)へ直進しかできない。マップを超えてしまう場合は動かせない。
・宝はちょうどで止まった時にもらえる。取った宝は取った人の手元に置く。
・宝は各プレイヤーが最低一つは取っていないとクリアにはならない。
・ターン(一巡を1ターンとする)制で、2人だったら12ターン、3人だったら8ターン、4人だったら6ターン以内にクリアしないと、ゲームオーバーとなる。

ここでこだわりを持って作ったルールがキャラクターカードです。それぞれの個性を認め合い、長所を生かせるようなものを作れたらと考え、横歩きができるカニ、一直線になら何マスでも進めるダチョウなど一人一枚キャラクターカードを配って、ゲーム中一度だけその特殊能力を使える(さくらを応援できる)というルールを入れました。

【ルール上の課題に試行錯誤の日々】

このルールで何度かスタッフと遊んだのですが、運の要素が少ないため、盛り上がりがなく淡々と進行する問題が起きました。論理的にパズルを解いていくみたいでハラハラドキドキ感がないのです。
あと、どういうアクションを取るかの話し合いはあっても、頭の回転が早い人がどうしてもリーダーシップを取って指示を出してしまいがちに。例えば「私が3マス進むから、Aさんはさくらの向きを変えて、Bさんは1マス進んで」など。指示された人はそれをこなすだけという場面が頻繁に見られました。それは果たして”協力し合っている”と言えるのか?協力ゲームとしての壁にぶち当たりました。

同時期、友人の家でもテストプレイをさせてもらいましたが、その時、現状のルールが難しすぎて、なかなか宝を集められないという事態が起きました。友人が「地球は丸いということで、南から下に移動したら北に、東から右に移動したら西にワープできるっていうルールはどうですか?」と提案をしてくれました。即採用することにしました。これによって難易度は大きく下がり、加えて、ダイナミックなコマの動きが出て、ゲームがぐっと洗練されました。


地球は丸いからワープできる

さらに「宝を手に入れた後、日本に帰ってくるルールにしては?」という提案もありました。「移動の難易度が下がった分、クリアまでの難易度を上げてはどうか?」とのこと。このアイデアにも納得がいったので採用することに。
ただ、やはりパズル的要素が強く、偶然性が少ないというのは解決すべき課題だと感じました。

まず私はゲームとしての歓喜を作ろうと、カードを論理的に計算して使っていくのではなく、全てを神経衰弱のように裏向きにして、引いた数でどう進んでいくかを考えるルールに変更しました。これはかなり大きなルール改革でした。偶然性が高まったことによって、盛り上がりが増し、先が読みづらくなったことによって、誰かが主導権を握って指示を出すことが難しくなり、協力ゲームとしてのバランスが良くなりました。
また、数字カードが1・2・3しかないのは難しすぎるという理由から、1から3まで好きな数だけ進める「フリー」のカードを入れました。さらに歓喜を作るという意味で、記憶の要素も入れることにしました。メモリーゲームは昔から変わらぬ楽しさがあり、人が楽しいと思う要素として根強いものがあります。それが現行のルールでも採用している「方位磁針」(1枚めくれる)と「望遠鏡」(3枚めくれる)のカードです。カードを全員で記憶しておいて、ここぞという時に使えます。そして、好きなマスへ飛べるラッキーカードとして「舵」のカードも入れました。これら新たに作ったカードの枚数配分は、難しすぎず、簡単すぎないよう細心の注意を払いました。


フリー(1〜3)、方位磁針、望遠鏡、舵のカード

その後、スタッフ会議の中でターン制は誰かがカウントするのがわずらわしいという意見が出ました。確かに1ターンごとにマーカーを動かして、ターンを管理するのは一手間です。ゲームに夢中になってカウントし忘れることもあるでしょう。しかし、場のカードが無くなって終了とするルールだと、カードを全部使うことが前提になるので、緊張感が無くなり、ハラハラドキドキ感がありません。そこで、カードを引く過程でゲームが終わる方法はないかと考えた結果、カードの中に「終了」に近づくカードを入れることにしました。つまり、このカードが◯枚出たらゲームオーバーというもの。このメカニクスは協力ゲームに多く採用されている王道的な手法であり、私もこれに習い、出て欲しくないこのカードを敵役として設定。そこで生まれたのがさくらのライバルとなる海賊モンキーXでした。モンキーXはボードの中に組み込むことにし、モンキーXの船が5マス進む(5枚引く)とゲーム終了としました。


海賊モンキーXはボード右手のコースを上へと進んでいく

ストーリーを詰めていく中で、さくらとモンキーXが何か共通するものを取り合っているという図式が望ましく感じ、その中で”黄金バナナ”が生まれました。光り輝く何とも珍しい伝説の黄金バナナを、さくらは持ち前の好奇心から、モンキーXは一攫千金を目的に獲得を目指すというストーリーに変更し、物語の整合性を付けました。これは大事なことで、そこに整合性がないとプレイヤーは腑に落ちず、ゲームに没入することが難しくなります。


光り輝く黄金バナナ

このストーリー詰めの段階で、宝石ではなく、6つの石板B・A・N・A・N・Aが揃ったら黄金バナナが出現するルールに変更。6つ獲得したら現れる7つ目の宝石にあたるものを黄金バナナにしました。それから、プレイヤー各自が最低一つは獲得していないといけないというルールも難易度を考慮し、無しにしました。同時に、取った宝はこれまで各自が手元に持っていましたが、ボード上部へ並べて置いていく設計にしました。こうすることで集まっていく過程が視覚的にわかりやすくなり、集める楽しさが増しました。

【留守家庭でのテストプレイを経て、完成へ】

4月中旬、子どもたちの反応を知るべく、スタッフの原田とともに赤坂小留守家庭に伺いました。そこで3つの改善すべき点に気付きました。
まず1つ目は小学校低学年では「自分がチームのために尽くす」気持ちを持つのがまだ難しいということでした。自分の番が回ってきて、さくらの向きを変えるだけ、というのに満足できなくて、やっぱりみんなカードを引きたいし、進みたいんだ、ということが分かりました。野球に例えるなら、打席が回ってきたら送りバントではなく、毎回バットを振りたいんだと。
2つ目はキャラクターカード。それぞれにキャラクターカードがあって、一度だけその特殊能力を使えるというルールがややこしく、いつ使っていいかわからずにゲームが終わっていました。それぞれの個性を生かし合うことを願って、キャラクターカードにこだわってきましたが、当の子どもたちがそのルールを理解し楽しめなければ、それはただの押し付けになってしまいます。
3つ目はゲーム目的の複雑さ。石板を6つ集めたら、黄金バナナが手に入り、それを日本に持ち帰ってクリア、という段階のある構造が難しく、石板を6つ集めた時点や黄金バナナを手にした時点でクリアだと勘違いし、大喜びをしていました。そんな子に「いや、黄金バナナを日本に持って帰ってくるまでだよ」と説明するのは野暮だと感じました。ゲーム中で歓喜するピークの瞬間をクリアとするルールに変更しようと思いました。
さくらの向きを無くす(どの方向にも移動できる)、キャクターカードを無くす、石板を無くし、7つの宝石を集めたら、その時点で黄金バナナが手に入り、クリアとする。そのように改善しました。

その後、8歳のお子さんがいる知人宅へテストプレイに伺いました。改善ルールで遊んだのですが、とても楽しそうに遊んでくれてほっとしました。知人から「海賊カードの中に、2隻描かれてあるのがあったら面白いのでは?」というアイデアをもらいました。これまで海賊カードは1隻しか描かれておらず、1マスしかモンキーXは進まないルールでしたが、この2隻カードを引けば一気に2マス進みます。これは確かにハラハラドキドキ感が増すと考え、採用することにしました。

2隻描かれた海賊船カードはモンキーXが2マス進む

5月下旬、改善したルールを試すため、今度は百道小留守家庭に伺いました。改善点が生かされ、大いに盛り上がりました。弾けるような子どもたちの笑顔と歓声。小学1年生の子もちゃんと理解できており、わかりやすくして正解だったと思いました。5ヶ月に及んだこれまでの試行錯誤が全て報われたようで最高にうれしかったです。帰りの車中、原田と一緒に「やった!」と喜び合いました。

こうしてルールはようやく完成に至りました。次章はゲーム内容物の製作の話です。

vol.3 へ続く)

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