ゲームデザイナー特集 vol.1「アレックス・ランドルフ」
「すすめコブタくん」「ハゲタカのえじき」「テンポかたつむり」「ガイスター」・・・これらの名作ゲームはある一人のゲームデザイナー(ゲームを考える人をこう呼びます)から生まれたものです。その名はアレックス・ランドルフ(Alex Randolph)。
ゲームデザイナー特集 vol.1は、"巨匠"と称されたアレックス・ランドルフ氏を紹介します。
●略歴
画像元:「アレクサンダー・ランドルフ 陽のあたる場所」フィリップ・エヴラール著
1922年、アレックス・ランドルフ氏はボヘミア(現・チェコ)で生まれます。本名はアレクサンダー・ランドルフ。
38年、16歳の時にアメリカ・アリゾナ州へ家族で移住。出世時の事情(第1次世界大戦禍の混乱)から公式な国籍を持っていなかった彼はアメリカで国籍を取ります。よく「アメリカ人」「アメリカ出身」と紹介されるのはこのためです。
ボストンで広告の仕事をしていた彼が、ボードゲームのデザインを本職としたのは61年、40歳を前にしてのことでした。
66年、将棋を学ぶために来日したランドルフ氏は72年まで日本に住み、将棋の有段者となっています。
その後イタリアのベニスに移住し、子どもから大人までが楽しめるゲームを約100作発表。そのうち約20作が賞を受賞。代表作は上記の他、「ツイクスト」「ザーガランド」「ドメモ」など。
また、ゲーム作家の権利を守るべく、地位向上に奮闘。ゲームデザイナー連盟(SAZ, Spiele-Autoren-Zunft e.V.)を共同創設し、名誉会長を務めます。
2004年、81歳でベニスにて亡くなります。
参考文献:「アレクサンダー・ランドルフ 陽のあたる場所」フィリップ・エヴラール著
●当店取り扱いゲーム紹介
すすめコブタくん(商品ページはこちら)
ハゲタカのえじき(商品ページはこちら)
テンポかたつむり(商品ページはこちら)
ガイスター(商品ページはこちら)
●ゲームの特徴
ランドルフ氏の作るゲームの特徴は三つあるように私は思います。
一つは、驚くほど(たったそれだけ?と思えるほど)のルールの明快さによって、ゲーム本来の魅力を浮き彫りにさせている点。あらゆるものを削ぎ落とした、それは引き算の美学とも言えます。
二つ目は、人間についての考察を深めていたランドルフならではと言える、対人で遊ぶからこその面白さです。声、表情、雰囲気、リアクション。それらを頼りに人の心理を読み、想像し、推理する。例えば、「ガイスター」をコンピューターゲームにして遊ぶこともできますが、そうすると面白さは一気に半減してしまうでしょう。そこに対戦する生身の人間がいるからこそ、面白さが引き出される、そんな設計のゲームが多いように思います。おそらく人間愛が強い方だったのではないでしょうか。
そして、三つ目はその多彩さです。3才の子が遊べる「テンポかたつむり」から、大人がじっくり遊べる「ハゲタカのえじき」まで、すごろく系から将棋系まであらゆる年齢向けの異なるジャンルのゲームを作り出しています。「え?これもランドルフ作品だったの?」と思わされることがよくあります。これだけ幅広いのに、その全てに彼の一貫したゲーム哲学や美学が反映されていて、そこは職人だなと思います。
●「ゲームデザイナー」の地位を向上させた人
ゲームデザイナーの名前が小説家や音楽家と同じようにパッケージに表記されるようになったのもランドルフ氏の功績。
以前は出版社の名前しか表には出なかったのですが、今では彼のおかげでデザイナー買いという言葉があるくらい、ゲームデザイナーというものが出版社、消費者からもきちんと認知され、評価される時代になりました。
↑ゲームの箱にはこのようにデザイナーの名前が記載されています。
「カタンの開拓者たち」の作者として有名なクラウス・トイバー氏も「アレックス・ランドルフ氏は作品に初めて自身の名前を冠し、ゲーム出版社にゲーム作家をビジネスパートナーとして認めさせ相応の待遇を勝ち取り、後進のゲーム作家のために道を切り開いた人物」 と評しています。
彼が残したこの大きな功績は、現在でも多くのゲームデザイナーから称えられ、尊敬を集めています。
●おわりに
ゲームを選ぶとき、「ゲームデザイナー」に注目してみるのも方法の一つです。
「このデザイナーのゲーム、好きだな」と感じたら、そのデザイナーが作った別のゲームを遊んでみるのです。そうすると、特徴がわかってもっと好きになったり、あるいは別のデザイナーのゲームが気になり出したりします。
自分好みのデザイナーを探すのもまたボードゲームの楽しみ方です。
以上、「ゲームデザイナー特集vol.1」でした。
文章 津村修二(つみきやスタッフ)