画像元:ライナー・クニツィア氏の公式HPより
1957年ドイツ生まれ。イギリス在住。6歳の頃からゲーム作りを始めます。アメリカのシラキュース大学で修士課程を修了後、理系の評判が高いドイツのウルム大学で数学の博士号も取得。そんな経歴からクニツィア博士とも呼ばれています。
銀行員(プロジェクトマネージャー)、会社経営者を経て、1990年33歳の時に職業ボードゲームデザイナーとして独立。700以上のデザインを手掛ける多作のデザイナーとして知られています。代表作は「指輪物語」「チグリス・ユーフラテス」「バトルライン」「モダンアート」「ヘックメック」「ケルト」「ペンギンパーティ」「ラマ」など。
●当店取り扱いゲーム紹介
ペンギンパーティ(商品ページはこちら)
エスカレーション(商品ページはこちら)
うさぎのニーノ(商品ページはこちら)
●ゲームの特徴
クニツィア氏のゲームの特徴は三つにまとめられます。
一つ目は、数学博士らしく、確率を考えるゲームが多いこと。サイコロを使った約140のゲームとそれらのバリエーションを掲載した「ダイスゲーム百科」の著作をするなど、確率を理論的に研究するプロフェッショナルと言っていいでしょう。
二つ目は、Aを選べばBが立たず、Bを選べばAが立たずといった「ジレンマ」が悩ましいゲームが多いこと。ファンの間では「クニツィア・ジレンマ」と称され、親しまれています。「ペンギンパーティ」や「エスカレーション」などがその顕著な例です。
※ジレンマ=ゲームの構造を説明する際によく用いられるボードゲーム用語。
三つ目は、ゲームデザインの圧倒的な量と多様性。そのことに関して彼はこう語っています。
常に新しいものとインスピレーションを探しています。何も書かれていない紙切れに向かって座り、何かを作らなきゃと作業を始めるのは非常に難しいです。私は1つのゲームを作っている中で、そのゲームでは使えないけれども、別のゲームでは使えそうなアイデアが思い浮かぶことが多いです。そしてそれをノートに書いておきます。それが別の新しいゲームの始まりになったりするのです。ゲームデザインの1つのアイデアがまた別のアイデアを生み、雪崩のように続いていきます。だからアイデアが尽きることは無いのです。 引用:コタクジャパン 2013年4月21日 インタビュー記事より
1つのアイデアがまた別のアイデアを生む。クニツィア氏はこうして数多くのゲームを世に出しているようです。 ●ゲームデザインをする時に大切な7つのこと クニツィア氏は自身のTwitterで「ゲームデザインをする時に大切な7つのこと」として 以下のように述べています。 1.イノベーティブなものから始めよう →イノベーティブなものとして終わらせるには、そこが最良の機会です。 2.科学者ではなく、アーティストであれ →確立された方法を避けましょう。踏み固められた道に従うべきではありません。 3.自分の独自のスタイルを見つけよう →他の人の後追いでは革新や栄光へは辿り着けません。 4.自分が遊んで楽しいゲームをデザインしよう →そうでなければ、作品にあなたの情熱は現れないでしょう。 5.ゲームデザインは子どものようなものだ →最大の可能性を持つように導くことしかできず、それを力づくで従わせることはできません。 6.テストプレイはゲームデザインの原動力である →あなたがどんなに経験を積んだとしても、それを楽しまなければいけません。 7.長い繰り返しのプロセスを覚悟しよう →ゲームが完成するまでの道中、進んだり戻ったり、たくさんの迂回を覚悟してください。 この7箇条はゲームデザイナーの間で「金言」として大事にされています。 ●座右の銘「Enjoy the Games!」 2015年、私はドイツ・エッセンで開催された世界的ボードゲームの祭典「シュピール」の会場で偶然にもクニツィア氏とお会いしたことがあります。(シュピ―ル体験記はこちら) たまたま奥様と会場を歩いていたクニツィア氏を見かけた私は勇気を出して声を掛けました。すると立ち止まって、快く話を聞いて下さいました。紳士的な人柄もまた魅力的な方なのです。その中で、ファンであることや私が日本でゲームデザイナーをしていることを伝えると、笑顔でこんなサインをしてくれました。
「Enjoy the Games!」は座右の銘なのだそうです。「ゲームを楽しもう!」というシンプルなメッセージに、原点を大事にする大切さを教えられました。このサインは宝物として部屋に飾っています。
●おわりに
ゲームを選ぶとき、「ゲームデザイナー」に注目してみるのも方法の一つです。
「このデザイナーのゲーム、好きだな」と感じたら、そのデザイナーが作った別のゲームを遊んでみるのです。そうすると、特徴がわかってもっと好きになったり、あるいは別のデザイナーのゲームが気になり出したりします。
自分好みのデザイナーを探すのもまたボードゲームの楽しみ方です。
以上、「ゲームデザイナー特集vol.2」でした。
文章 津村修二(つみきやスタッフ)
