《さくらの大冒険 開発ストーリー vol.3》 (津村修二)
vol.3では各パーツのこだわりについて書きます。製品化に向け、どのように各パーツを選んでいったかというお話です。
【ダブルサイコロ】
宝石の位置を決めるのに使っているダブルサイコロ。サイコロの中に小さなサイコロが入っている珍しいサイコロです。
原案の時点で宝石の位置を毎回ランダムに決める(新鮮に楽しんでもらうため)というのはすでに考えていて、その時からダブルサイコロは使用していました。
このダブルサイコロは当店でも取り扱っている商品なのですが、いつかゲームのパーツに使えたら面白いだろうなと思っていて、ちょうど今回のゲームにマッチしたので使うことにしました。
見た目にユニークで楽しいサイコロですが、ゲームを効率良く進めるのにもたいへん活躍します。宝石1個の位置を決めるのに、普通のサイコロだと縦の目と横の目と2回振らないといけないですが、これだと1回で済みます。宝石7個分と考えると、7回もサイコロを振る行為を省略できます。
宝石の位置を決めるのはゲームの準備段階ですから、なるべく早く済むに越したことはありません。
子どもを惹きつける"モノ"としてのキャッチーさとゲーム進行の効率化が採用した大きな理由です。
【宝石】
「さくらの大冒険」の肝となるパーツが宝石です。
宝石を求めて旅に出掛けるのですから、「欲しい!」「集めたい!」と思えるような魅力があることが宝石の必須条件でした。きらきらと輝く美しいガラス製の玉を宝石に採用したのはそんな理由からです。
とは言え、コストの問題もありましたが、私はどうしてもそこを譲れませんでした。他のコストを削ったとしても、宝石の質だけは守りたい。宝石がゲームに及ぼす影響はそれほど大きなものであると考えました。
色にもこだわり、宝石は7個全て違う色にしました。7色だとカラフルで華やか、宝らしいという点に加え、7色あれば「赤を目指そう」「いや、緑が先だよ」と色によって話し合いもできると考えました。
7個にした理由は、7という数に今作との親和性を感じたからです。例えば、世界を表す言葉に"七つの海"という表現があります。また、"世界七大陸""世界七不思議"と何かと7は冒険物と相性の良い数で、これはぜひ取り入れたいと思いました。
さらに7はゲーム上でも集める数として多過ぎず、少な過ぎず、妥当な数でした。
【カード】
サイズは手に取りやすい4.5cm×4.5cm。子どもの手に丁度良い大きさにしています。
厚みは繰り返し遊びに耐えうる1.5mm厚。小学校の留守家庭で遊ばれることを想定し、少し乱暴に扱っても大丈夫なよう厚さを考えました。それでもコスト面を考慮し、必要最低限の厚みにしています。
イラストはイラストレーターの大野智湖さんに依頼。「数字カード」は宝探しの冒険に似合うような字体で手描きのデザインを採用。「方位磁針」「望遠鏡」「舵」はどんなことができるカードかをわかりやすく、「海賊船」は出た瞬間に「うわっ!」と思ってもらえるような恐ろしさを表現してもらいました。
絵はそれを見たときに起こる感情に大きな差が出てくるため、ゲームを作る上でとても大事な要素なのですが、今回は大野さんに依頼して良かったです。
また、裏面の柄については細心の注意を払いました。どうやっても見分けることができない柄を作る必要があったからです。特に子どもはどんな小さな傷や汚れでも見つけてしまいますから、カード一枚一枚に違いが出ないように均一に作らないといけません。
当初、波など海をイメージした柄も考えましたが、最終的には走るさくらが細かくデザインされた"隠れさくら"柄を採用しました。ゲーム中は、カードの表面より裏面を見ている時間の方が長いので、裏面は遊び心のある楽しい柄にしたいという思いがありました。
さくらの横顔を並べたデザイン案も。
どれくらいの柄の細かさが適切か、3パターンで比較。写真一番上の最も細かい柄を採用。
【ボード】
サイズは4〜6人で遊ぶのにも適した縦25cm×横35cm。A4より一回り大きいサイズです。持ち運んだり、収納しやすいよう折り畳み式にしています。
ボードは見ただけでゲームの目的がすぐにわかるデザインを心掛けました。ボード上部にはさくらが集めた宝を置けるマスを作り、その先に黄金バナナのマスを配置することで、目指すゴールをわかりやすくしています。また、右側には同じくモンキーXが進むマスを作り、ゴールを同じ黄金バナナのマスにすることで「どっちが先に黄金バナナを獲得するか?」というゲーム性をわかりやすくデザインしています。
マップに「東西南北」の表記を入れたのもこだわりのポイントです。みんなでどこへ進むか話し合う時、「上」や「右」と言うより、「北」や「東」と方角で呼んだ方が冒険感が強いからです。加えて、ボードを囲んでプレイする場合、「上」と言われても、反対側に座っている人から見たら「下」だったりするので、共通認識が得られやすいという意味でも「東西南北」を入れたいと思いました。
それから、ダブルサイコロの色に合わせ、マップ上の縦の目を赤、横の目を白にしています。色を見て、縦と横のどっちの目のことを表しているのかわかるようにしています。
イラストは冒険ファンタジーの世界観に合わせ、西洋の古地図風にしています。
制作初期のボードのイラスト。さくらとモンキーXの大きさのバランスやボードの色合いなどを調整し、現在のデザインに至ります。
ボード裏面はさくらとモンキーXが地球の端と端で追いかけっこをしています。着物の裏地みたいに、見えないところ、気付かれにくいところにこそ遊びを入れようと考えました。
【コマ】
さくらとモンキーXのコマ。高さはさくらが4cm、モンキーXが4.5cm。持ちやすさを考えて、平面でなく、立体で作りました。土台と本体のパーツが抜けてしまうことが課題でしたが、何度か試作を繰り返し、抜けにくい今の形に落ち着きました。絶対に抜けない品質にまでは到達しませんでしたが、これが現状のベストだという判断で採用しています。
以上、各パーツのこだわりについてのお話でした。
(vol.4へ続く)
前章までの《さくらの大冒険 開発ストーリー》
vol.1 開発のきっかけ
vol.2 ルール作りの過程
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